縁熟かぼちゃ「いいたて雪っ娘」について

白い薄皮に包まれているのは、艷やかで色濃い黄色の果肉。一口食べるとポクしっとりした食感から、優しい甘さが溢れてきます。

夏には太平洋側から冷たいやませが吹き込み、冬には氷点下まで冷え込む福島県飯館村。

当時、農業高校の教師だった菅野元一は、この地で食味と保存性にこだわって改良選抜し、丹誠込めて育種してきました。

まだ名前のなかった白皮のかぼちゃは、30年近くの年月を経て「いいたて雪っ娘」と名付けられ、栽培に向けて「さぁ、これから!」というその時、東日本大震災が発生したのです。

生みの親と共に雪っ娘も一時は故郷を離れましたが、飯舘村への想いが失われることは決してありませんでした。

万が一に備えて手元に保管していた最高の、そして最後の種。

「混沌の中で運び出した雪っ娘の種、その生命を絶対に絶やさない。」

30年以上育んできた結晶から小さくもたくましい生命が芽生えたのは、それから一週間後のこと。雪っ娘が生きる勇気と希望を与えてくれた瞬間です。

あれから10年以上が経過し、現在は飯舘村での栽培も再開。

畑の土作りやデベソ取りといった節目節目の作業を、多くの方に支えていただきながら進めることができています。

また、福島県だけではなく全国各地に栽培の輪が広がっています。

福島県北部には「までい」という方言があります。その意味は「ゆっくり」「ていねい」そして「てまひまかけて」。

いいたて雪っ娘は決してあきらめない強い信念を宿し、多くの人のまでいの心で、今日もおいしく育まれています。