【かぼちゃの長所に逆らうことなく、感じたままに】
ーー去年、一昨年とお二方が収穫祭でプロデュースした料理が、完成するまでの経緯を教えてください。
猿渡:イベントの料理ということで提供しやすく、しかも一皿でお腹いっぱいになるという決め事もあって、最初の年はカレーを作ることにしました。渡邊さんが販売している雪っ娘が入ったレトルトパックのカレーを食べて、もっと、かぼちゃの個性をストレートに伝えるカレーにすると面白いかなって思ったんです。


猿渡:完成品ではライスの上にある大きなクッキーも、元々は単体のお菓子として食べることをイメージして「ガリッとした食感のアメリカっぽいクッキー作れない?」って按田さんに提案したんです。でも、その後アイデア出しをしているうちに「カレーに刺したほうがいいんじゃないか?」という結論に。
按田:クッキー生地に練り込むのが雪っ娘のパウダーなら、たっぷり入れてガリッとしたクッキーを作ることができるのですが、雪っ娘のピューレを入れると水分が多くて、ガリガリとした強めの食感にならないんです。それならピューレの水分を使って、クラッカーみたいにしたほうがたっぷり使えるなって。
猿渡:そうそう。で、それだったらカレーに立てちゃえ!って。
渡邊:あれは斬新なカレーでしたね。
按田:斬新でしたよね(笑)。
猿渡:雪っ娘のピューレがかかっている側の黒っぽいビーフカレー。あれはレトルトで売れるカレーをイメージして作ったんです。鮮やかなピューレが別添えになってて、お客さんが自分のタイミングで食べる時にギュッとまとめる形にまとめれば、色合いも盛り付けもカッコイイし、来客時のメニューとしても手軽に出せる。もちろん、食べればソースに混ざりすぎることなく、かぼちゃ単独の味がしっかり感じる。今でも、あのカレーの完成度は高かったと確信を持っています。
渡邊:お客さんの評判も、すごく高かったんですよ。
猿渡:二年目はアプローチを変えて「この料理に入れられるんじゃない?」という考え方で進めようと。で、基本的には全部按田さんに任せていました(笑)。
元々は「按田餃子なんだから餃子をやろうよ」ってことで、主役は餃子。肉まんはおまけだったんです。皮に練り込むとか粉に混ぜ合わせるといった使い方は、彼女のインスピレーションや著作(注:「男前ぼうろとシンデレラビスコッティ」)を参考に作り上げました。
ーー按田さんとしては、餃子や肉まんの皮に雪っ娘のペーストを練り込むことで、かぼちゃの長所を引き出だすのがベストとお考えになったのですか?
按田:ですね。特に肉まんを作ろうと思ったきっかけは、南米ペルーの中華屋さんで食べた肉まんなんです。すごくみんなが並んで買っているんですけど、その店、他の物は美味しくないんです(笑)。そこにはゆで卵が入っていたんですが、雪っ娘を使うだったらその代わりにカボチャを入れられるなぁって。
猿渡:雪っ娘は甘さがものすごく強いかぼちゃではないので、餡にかぼちゃを入れるだけじゃなく、色でもかぼちゃの長所を出そうと。肉まんは、按田さんが最初にプロトタイプを作ってくれるまでは、話だけ聞いていた自分は「何それ!?」って感じでした。イメージを聞いているうちに「美味そう!」って思って、一つ作ってもらったら「なにこれ旨い!これで商売できる!」って思いました(笑)。
渡邊:餡に黒糖も角切りの豚肉も入っていて、組み合わせがすごいなぁって。おかわりしたお客さんもいました。



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