名店が語る「いいたて雪っ娘のここに惚れた!」 − その2・「天ぷら逢坂」 −

「自分以外の料理人の方が、このかぼちゃをどう感じるか? それを知りたいんです」

いいたて雪っ娘アンバサダーの猿渡浩之さんが持つ想いに触れて、私達も様々なジャンルの料理人が雪っ娘をどう使い、どういった長所や個性を感じるのか知りたくなりました。

そこで、猿渡さんがかぼちゃと共に腕利きの料理人を訪問。インスピレーションと経験を元に作られる一皿を通じて、雪っ娘の魅力をご紹介します。

【参加者プロフィール】
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■大坂彰宏
神田「天政」、箱崎町「つじ村」、元赤坂「OKAMOTO」で修行を重ね、2001年に虎ノ門に「天ぷら逢坂」を開業。コンセプトは「さっくり軽やかな口当たりの天ぷら」。毎朝築地で仕入れる新鮮な素材。綿実油と太白ゴマ油を独自の配合でブレンドした揚げ油。放し飼いで育てられた平飼い鶏の卵を使い、湿度や気温に応じて細やかに微調整を重ねる衣。この道一筋20年以上の経験と技術で天ぷらと向きあう職人の姿には、熱狂的なファンが多い。
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■猿渡浩之
大阪辻調理師専門学校を卒業後、都内ホテル等を経て会員制高級薬膳レストランの総料理長に就任。その後、本来の食の楽しみを模索・追求すべく、築地市場内の食堂を経て1997年に独立。現在は、完全予約制の料理店「田園調布 廣田」、完全予約制の宅配弁当店「廣田 真之坊」を経営。「ぜいたくな食材を無理なく楽しむ」「身近な食材で驚くほどの豪華さを作り上げる」といったテーマに基づくお任せスタイルの料理が、多くのファンを魅了。信念を曲げず真摯に食材に向き合う姿勢が、現役の料理人からの支持も高い「シェフの中のシェフ」。
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【かぼちゃは天ぷら屋の隠れた顔役】

−−お店では、かぼちゃの天ぷらはどういった位置づけになるのでしょうか?

大坂:ウチの店でもかぼちゃの天ぷらは人気ですね。夜のコースを一通り召し上がったお客さんにも、かぼちゃの天ぷらを追加注文される方が多いです。皆さんが共通してかぼちゃの天ぷらに期待しているのは「甘い」ということ。季節に応じて北海道をはじめとして全国各地のかぼちゃを使っていますが、お客様が求めているものとして、それは変わりません。

−−例えば、甘さが強すぎるかぼちゃであっても、調理をする上での使い勝手は変わらないものですか?

大坂:天ぷらにとっては、甘いかぼちゃのほうが向いてはいるんです。そのほうがお客さんの反応が顕著なので。同じ傾向なのがさつまいも。最近は甘くなっているのでお客さんが感動されますね。昔の定番の一つに、厚めのさつまいもの天ぷらの上に砂糖を少しかけて、溶かしたところにブランデーをかけるというのを出していたんです。でも、今はさつまいも自体が甘くなっているので、そのまま出していますが。

猿渡:それをいいたて雪っ娘でやると、どういった感じになるのか気になりますね。今日、作ることは出来ますか?

大坂:できますよ。あとで、お召し上がりいただいて感想を教えていただければと。

−−みなさん、天ぷらの口当たりはズッシリしたものより、軽やかな口当たりのほうがお好きですか?

大坂:そうですね。ウチも油を軽くして、軽やかな口当たりになるように作り出してます。綿の実と太白胡麻油を組み合わせて揚げ油を作りますが、ここに胡麻が入らないと美味しくないので、どちらの長所も生きるブレンドをしています。

猿渡:下処理として加熱をしてから天ぷらにすることはされないんですか?

大坂:やっぱり、そうすることで少し味が抜けるような感じがしますね。油で火を通したほうがいいと思います。さつまいもも厚めにカットしてじっくり揚げたほうが上手く感じますし。ファミレスだと茹でてから揚げてるみたいですが。

猿渡:一通りのコースを食べ終えたお客さんが「アンコール」をするときには、やはり野菜が多いのですか?

大坂:かぼちゃを含めて多いですね。特に、お客さんにとってはかぼちゃは夏秋のイメージなので、その時期に黒板に書いておくと、やっぱりさつまいもと合わせて、かぼちゃの動きはいいですね。

−−お客さんにとって、かぼちゃは夏秋のものなんですね?

大坂:そうですね、夏に九州産が出始めて秋の北海道の栗かぼちゃぐらいまで私たちも使っています。時期と産地が移り変わる素材なので、お客さんに「かぼちゃない?」って言われても「外国のならありますけど」ってなると「じゃぁ、いいや」ってなっちゃうんです。なので、逆に国産かぼちゃがない時期に提供をずらせるかぼちゃは、使い勝手がいいですよね。

−−では、通常この時期(2月)頃までかぼちゃは出していないのですね?

大坂:この時期はもう日本産のかぼちゃがないので、九州産が出るまでは間が空きますね。

−−産地に対するこだわりはどの程度お持ちですか?

大坂:いいのがあれば使うっていう感じですね。産地で言えば、特に北海道の栗かぼちゃなんかは甘いですね。あとは茨城産も。もっとも、最近は外国産のも、お客さんが思っている以上にはおいしいんです。

猿渡:日本の技術で栽培してるんですよね。元々、外国には日本型のかぼちゃがないので、日本の技術者が現地に行って作らせているんです。

大坂:あと、やはり南よりも寒い産地のほうが、寒暖差があるからおいしいかなって感じますね。

−−ランチタイムの天丼にもかぼちゃを使われてるんですか?

大坂:天丼だけではなく定食にも使ってます。海老とか他のタネには強い甘味がないので、かぼちゃやさつまいもといった甘いタネの天ぷらを入れます。レンコンとかナスは使ったことがないのですが、ずっと塩っぱいもので続ける中で、甘いものをアクセントとして使ってます。女性も甘い天ぷらへの反応がいいですし。

猿渡:特に天丼なんかは一つの組み合わせでお皿に盛るだけに、揚げるタイミングが大変ですよね。

大坂:さつまいもやかぼちゃは最初に鍋に入れちゃいます。その後に穴子を入れて、海老を入れて。タネによってはすぐに引き上げたりして、タイミングを調整してます。

猿渡:普段、材料はどんな感じで決めてるんですか?

大坂:メインはあらかじめ決めておくんです。魚だったら5種類ぐらい仕入れて、そのうち3種類をメインに使うと決めてます。例えば、キスとあなごとイカか何かっていう感じで。残り2つはその時その時ですね。本当はメゴチがあれば使いたいのですが。

最近、他の料理人とも話題になるのですが、昔からの料理に対する固定観念を持ち続けすぎてもダメだろうと。定番だけじゃなくて新しいものも探す時代になったと感じます。なので、金目鯛やタチウオ、アマダイとかも使っています。ただ、その中でも天ぷらに合わないものはあるのですが。これからは野菜も魚も広い目で探さないとダメなんだなって思います。

猿渡:最近は食材に関する情報が多すぎて、若い料理人の方はそれに踊らされて「何かやらなきゃ!」って。材料に使われていて材料を使いこなしてないなと。

大坂:あんまり走り回るのも、ちょっと違うんだろうなって思います。

猿渡:タネに塩をするとか干すとかの下処理は施されてますか?

大坂:塩はしてないですね。干すのは一回やってみたんですが、まだ満足が行く仕上がりにならないですね。ホタテの場合は脱水シートを使って保存性がぐんと高まりました。貝類には相性がいいですね。

猿渡:天ぷらの味付けにつけるものも変化していますよね。

大坂:例えば、粉山椒やカレー粉も悪くないとは思います。色々な要素を組み合わせることで、料理の姿が変わってきているので、少しずつ新しいことをやってみたいと思ってます。

【厚さでここまで変わるとは!大坂さんが作る雪っ娘の長所を引き出す一品・3種類のかぼちゃの天ぷら】

−−いいたて雪っ娘に触れた時の第一印象は?

大坂果肉の色がいいなと思いました。あと皮の硬さは保存性を高めているということで、他のかぼちゃとは全然違いますね。

−−かぼちゃの天ぷらの味は、タネの厚さで変わるんですか?

大坂:厚みによって印象は大きく変わりますね。今から3種類の天ぷらを揚げてみたいと思います。

雪っ娘を丁寧にカットして生まれたのは、5ミリの薄切り、家庭に並ぶ天ぷらの標準に近い1センチ、そして約3センチの厚切り。この3種類を揚げてもらいました。

大坂:一番薄い天ぷらは衣と合わせて、軽やかな食感が楽しめる一品に、1センチの天ぷらはかぼちゃの甘さと衣のハーモニーが楽しめて、一番厚いのはかぼちゃの甘さが強調される料理になるんです。

猿渡:印象が大きく変わりますね!

−−5ミリのかぼちゃはどのぐらいの時間、揚げるのでしょうか?

大坂:5ミリで1分ぐらいで、厚いかぼちゃで5分ぐらいです。厚い場合にはアルミで包んだかぼちゃを3分ぐらい蒸してから揚げる方法もあります。ただ、その手間を考えると味を逃したくないこともあって油で揚げたほうがいいですね。あと厚めの天ぷらは揚げてから少し置いて、落ち着かせたほうがおいしいですね。

−−最近、厚めの天ぷらが多いと感じるのですが、それは流行なのでしょうか?

大坂:というより、おやつ感覚なのかなって感じますね。厚くして甘味をしっかりと出すということで。天ぷらとして出す場合には、そのほうが天ぷららしさを感じていただけますし。

ここで対談の冒頭に出てきた、厚切りかぼちゃの天ぷらにブランデーと上白糖蜜をかけた一品が登場。揚げ油の軽やかな香りとブランデーの芳醇な香りに甘さがブレンドされた、新たな香り立ち上ります。

猿渡:お!なるほど!!

大坂:これはスイーツの位置づけなので、さつまいもで作る場合にはコースの締めに食べてたんですよ。修行先の天政でこの料理をやってたんですが、昔はまだ芋が甘くなかったから、この料理を出していたんじゃないかなって。

−−だから甘くしようと。

大坂:ですね。これにバニラアイスをかけて食べる人もいましたね。それが天政流だったんです。それこそ、かぼちゃを使う場合には、アイスをかぼちゃアイスにすれば合うのかなって。

猿渡:天ぷらだから衣がついて、タネの色はあまり関係ないのかと思ったら、これだと色がしっかり出るんですね。

大坂:結構出ますね。どうしてもこの厚さだと時間がかかるので焦げも出てしまうのですが、逆に焦げるということは糖分があるということの表れですし。雪っ娘もこれだけ甘いなられば十分かなと思います。

元々、かぼちゃは男性よりも女性の方が好む味ですが、むしろこのぐらいの甘さだったら丁度いい感じですね。上に掛けるお砂糖は本当は黒蜜を使っていたのですが今日は上白糖で。黒糖のほうが洒落てるかなとは思いますけどね。雪っ娘は個体によって甘さが変わってくることはないんですか?

猿渡:そんなには変わらないですね。ホクホク感は個体差がありますが。

大坂:自分で足しておいしくするってことですね。それこそ、パティシエの方が喜ぶかぼちゃですね。色もしっかり出るので。

−−かぼちゃの天ぷらは、そのまま食べる場合には塩で食べるか天つゆで食べるかで、印象は変わると思いますが、オススメはどちらでしょうか?

大坂:天つゆだと面白くないなって思います。せっかくの甘味を活かすには塩ですね。さつまいもも塩かそのままの方が多いです。

−−家庭でかぼちゃの天ぷらをおいしく作る上でのポイントは?

大坂:皮を大胆に剥いて厚めにカットすることですね。家庭の場合でしたら、電子レンジで軽くチンしてから揚げれば中まで熱が通ると思います。あと、揚がった後は1〜2分ぐらい置いてから切ると、落ち着いていい感じになりますよ。

猿渡:家で作る場合には、油の温度がわからないっていう方もいると感じますが、最近のコンロは温度調整もできるので作れるんですよね。

大坂:ただ、面倒と考える方が多いみたいですよね。衣を作ったりするのも。

−−ちなみに、かぼちゃとかぼちゃ以外の野菜で、衣のつけかたは違うんですか?

大坂:かぼちゃのようにしっかり揚げるタネは衣は厚めにして、アスパラのようにすぐに揚がるタネは薄めにしています。ものによっては衣から剥がれてしまうので、そうならないように心がけています。

【実だけならぬ、雪っ娘のおいしい副産物】

猿渡:このかぼちゃは硬いので長持ちする。年が開けた時期にもある。あとは色あいもいい。そういった長所を持ったかぼちゃですが、天ぷらのタネとして使う上ではどのように感じられましたか?

大坂:厚切りにして時間をかけて揚げたほうが、おいしさが出るのでいいなあと。なので、こっちのほうが評判はいいんだろうなぁと思います。やっぱり、かぼちゃは好きな人がいるので、普段使っている夏から秋以降の季節を外れても使えるのはいいですね。

猿渡:その時期でしたら、割と涼しい部屋に置いておくと保存が効くんです。

−−今日のは3ヶ月から4ヶ月ぐらいの熟成ものなんです。

大坂:へぇ…それはいいですね。大きさは同じぐらいですか?

猿渡:大きいのも小さいのもあるんです。皮の厚さも同じぐらいで。でも18〜20センチぐらいのがいいなと感じますね。あと、このかぼちゃが育つ時の新芽が面白いんです。独特の香りがするので。

大坂:いつ頃出るんですか?

猿渡:7〜8月ぐらいですね。

大坂:それは天ぷらに面白そうですね。

猿渡あとは花そのもの。ズッキー二の花と同じような感じで。それも間引いて捨てることが多いんです。その根本の小さい玉の部分も、ピクルスなんかに使うと美味しいんです。

大坂そうした面白さも含めて、雪っ娘は次のシーズンにまた使ってみたいですね。自分が使うことで復興支援になるのであれば、それも嬉しいですし。

進行/撮影/執筆:坂本貴秀(Local-Fooddesign

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【店舗情報】
天ぷら逢坂
住所:〒105-0003 東京都港区西新橋2-13-16多田ビル1F
電話番号:03-3504-1555
営業時間:
◯ランチ 11:15~14:00(月~金)/11:30~13:30(土)
◯ディナー 17:30~23:00(月〜金 L.O.21:00)/17:00~23:00(土 L.O.21:00)
定休日:日・祝日・第三土曜日
ウェブサイト:https://www.tempura-oosaka.jp/
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